コトリ

すきなひとの
はじめての恋人は
十も歳上の人だった
彼女には恋人がいた
それでも愛があったのだと、彼は言った


その
立ち入り難い
聖域のような空間から
彼を離そうとして
煙草はきらいだと言った
けれど
彼の自由を奪ってしまった


煙草を吸いはじめた
ピンクの煙草から
流れる煙は青くてきらいではなかった
けれど
身体がじわりと侵されていくのがわかった


彼女よりもわたしがすきかと
一万回以上問うて
一万回以上すきだといわれた
けれど
いつか彼女が迎えに来るのがこわかった


十も下の男の子はいなかった
ふたつ下の男と寝た
けれど
彼らのような愛はどこを探しても見つからなかった


わたしは心底
永遠に出会うことのない彼女になりたかった
けれど
彼女にはなれなかった


そして
知らぬ間にわたしたちの聖域を踏みにじってしまった


彼女はいま愛しているひとと結婚したという


わたしは
汚してしまった聖域を
抱き合いながら
抱きしめながら
涙で湿らせた袖口で必死にこする


彼女はそのとき泣いただろうか
どうか
泣いていなければ良いのに
それだけが、いまの救い


自由詩Copyright コトリ 2007-10-19 02:11:31
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