波とかたち
木立 悟
夕暮れと同じ色をした
雀の群れを乱しては進む
道標を飾る白い花
いつの世も悲しい子らはいる
わずか数秒のねむりのつらなり
分かるはずもないくりかえしのわけ
ねむりのままただめざめては
めざめたままただねむりゆく
風のなかの呼び子
ふいに昼の夢からさめ
泣いている自身に気づく
ない者のかたちが残っている
小さな灯りか遠い灯りか
丸く角のない明るさのなか
裸で微笑みかける人の
手だけを握りしめる夢
降る声を浴びながら
降る声に泣いていた
水のように触れていいから
鉱のように 触れていいから
見知らぬ道で
見知らぬ部屋で
声はつづき
返ってはこない
おだやかに 苦しまずに
ねむるように それがどれだけ
どれだけつらいことか
何も言えぬまま 消えてゆくことが
煙と草に洗われて在る
今はないかたちのかわりのかたち
水のように揺れている
鉱のように揺れている