信号の唄 
服部 剛

信号が青になり 
「通りゃんせ」の唄が流れ 
人波に紛れ横断歩道をわたる 

若い市議会議員はひたむきに 
「よろしくお願いします!」 
そ知らぬ顔で通り過ぎゆく人々に 
自分の顔がにっこりとしたビラを差し出し 
幾度も頭を下げている 

東口の階段を上り 
駅構内を通り抜け 
西口の階段を下る 

信号待ちの女学生達の後ろで 
地面に落ちた名札が一枚 
ひらひらと震えていた 

( 大人になっていつのまに忘れていた 
( わたしの ほんとうの名前 はなんだろう・・・

人知れぬ ? を胸にかかえたまま 
ふたたび「通りゃんせ」の流れる人波に紛れる 

背後に遠のく 
ひたむきな若い議員や
風に震える名札のことを忘れて 





自由詩 信号の唄  Copyright 服部 剛 2007-10-18 01:26:42
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