砂丘
ふるる

全てを飲み込んで許し
傷つけ吐き出す


片足がほろんでいる男の
肘にぶら下がる女

際限なくせばまり風にうずまく砂は
常に何かを形作ろうとし瞬間
走るように崩れ去り
うめきすら残さない
また、
きれいに流された

二人はうずもれるに任せる
じっとしてそのままでいいんだから
じっとしてそのままで
あたし早く飲み込まれたいだって
あんたのほろんだ足きっと
この中にまだあって
あたしたちずたぼろにされて
吐き出された後
その足みどり子を連れてるかもしれないよ

だめでもさ
あたしたちの血肉を使い
ほんものの足を砂が
作るかもよ
朝日が来たなら光りながら立つかもよ

砂の音はまるで
医師の骨ばった指が
やさしくカルテをめくる音

さらさらと
さらさらと

ふいに
喋り続けた女は黙り

男のきょときょとした
見開いた目に映っている、
いる、

びっこを引きながら
砂丘が近づいて来る



自由詩 砂丘 Copyright ふるる 2007-10-18 00:16:35
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