マグカップ
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一面に広がる花畑
真ん中に大きな木があって
枝には天使が座っている
そんな柄の描かれたマグカップ
同じものを二つ持っている理由は
多分君と僕しか知らない
見飽きるほど溢れていた笑顔が
写真の中で悲しく揺れている
最初の給料を叩いて買った
赤茶色のL字型のソファー
肘掛の部分が焼け焦げた理由も
多分君と僕しか知らない
広すぎるベッドで横になる
夢の中でさえ君には会えない
買い物帰りに歩いた道筋
泣かせるたびに連れて行った店
夕暮れの公園で誓った約束も
今では君と僕しか知らない
本当はそれすら定かではない
君はとっくに忘れたかもしれない