(嘘の臭いがしちゃうね)
リヅ

フォークでスパゲティを豪快に巻く
彼女はそれを大きな口に放り込んで一飲みにした

「続けてよ」

僕が口に出すワンテンポ前に彼女は大きな口を開く

「馬鹿みたいだよねぇ 戦争なんて 殺し合いなんて」

彼女は高すぎる音をだした
こっそり嬉しそうに
直後 その表情を白ワインで胸に流し込む

「戦いは 何も生まないのに」

自分でもちょっといいことを言ったと思ったのだろうか
鼻が少し高くなった しかしピノキオのそれではない
極自然に高くなった
顔つきは悲しげなまま 伏せられた睫毛は長い
きっと彼女はこうやって美人になってきたのだろう


実は
戦わなくったって何も生まれないことを僕は知っていた


「なんで そんな簡単に尊い命を奪うんだろう」

彼女が知ろうとしない限り
きっと彼女はそれを知ることがない

「ね、聞いてるの?」

ブッシュがテレビの中で言った
“これはイラク国民を救うための戦争だ”
日本人のジャーナリストの話
命よりも大切な尊い信仰を守る為に
テロリストは戦う 聖なる戦いをする


まぁ それにしても
どれもこれも嘘の臭いがしちゃうね


「このスパゲティさ、美味しいね」

「現実味はするね」

「?」

彼女はとびきり純粋に
何も疑わず 生きている
下品な自分を正しい自分で隠しながら
これまでも
これからも



きっと彼女はこうやって美人になってきたのだろう

(嘘の臭いがしちゃうね)


自由詩 (嘘の臭いがしちゃうね) Copyright リヅ 2004-06-06 20:37:49
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