かんかく
岡部淳太郎
夕焼けなんてなくなってしまえばいいとおもう。昼と夜
をへだてるものをなんとなくつないでしまう、そんなち
ゅうとはんぱな橋は、星からやってきたぬすっとにくれ
てやるか、三日月のくらいぶぶんになげこんでしまえば
いい。人には、つながるものやつかまるものなんてほと
んどないというのに、あんなにもあたりまえのかおで両
手をのばしているのはゆるせない。光はひかりで、闇は
やみで、それぞれにくっきりとせつだんされてしまって、
その両者のかんかくをざんこくにきわだたせているほう
が、どれだけすっきりするかわからない。わたしは生き
ていて、わたしという仮のかおのしたで、おれのこのか
んかくをどうしてくれる? といきまいているというの
に、あいかわらずわたしはわたしであって、わたしのか
らだとあなたのからだはそれぞれのひふでくっきりとぶ
んだんされていて、(おれはそれがかなしいのだ)。あ
るいはおそろしいのか。このかんじょうも黒でも白でも
なく、その両方がまじりあったわけのわからない色づか
いだ。ああ、このかんかくをどうしてくれる。このちぢ
めることのできないかんかくをどうしてくれる。きょう
も空は夕焼けで、やつはにっこりほほえんで、くらいも
のとあかるいものをへいわにつないでいるというのに。
(二〇〇七年十月)
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散文詩