夜へ 鉄へ
木立 悟




菱がたの声が地に灯り
空にも海にも届きながら
誰も呼ばずにまたたいていた


夜の鳥
飛べないのだと
想いたい鳥


水をざくりと斬る光
動かない縦の水紋
熟れた灯の実
揺れの描く輪
落ちかけたまま落ちない瞳


暗い緑が歯をくいしばり
四角い夜に横たわる
脚を閉じ
目をそらし
はじまりと終わりに
星を数える


かわいた血の粉
赤でも黒でもない音の粒
土になれずに響きつづける


ひとつのボタンを
掛けては外す片手の指が
水の陽にかがやき
静かに見えなくなってゆく
鳥に触れながら
鳥の向こう側に触れながら


やさしく あたたかく
何のためにもなれないまぶしさが
誰にも呼ばれずにまたたいていた


夜のかたち 夜の色
夜へ沈むものをひろう錆の手
見えない何かをあやすように
自らを散らしながらひらかれる















自由詩 夜へ 鉄へ Copyright 木立 悟 2007-10-12 22:29:21
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