相棒
木屋 亞万

泣くな屍
乾き始めたその目の変わりに
俺が大きな涙を流してやる

お前は遺体
もう人ではない
身体の機能に欠陥などなくとも
脳に損傷などなくとも
動かす何かが抜け落ちた

冷たくなるな
血が引いてしまっても
心臓に赤い薔薇が咲いた
顔は枯れ始めた白い牡丹
花に囲まれて

目頭に熱く血は走り
陽炎の火柱が泉を沸騰させ
薬缶から吹き出す湯のように
少し端から零れ出てきた

煙突から雲に消えていく
しばらくの記憶が消えて
死ぬ少し前の状態で
お前はずっと生きている

お前の変わりに
これから少し声を上げて泣いてやる
身体を亡くしたお前が
俺の中で叫ぶ産声だと思ってくれ





自由詩 相棒 Copyright 木屋 亞万 2007-10-11 00:03:14
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