小包
Souko
かきあつめて かきあつめて
真空パックにして送ります。
半年後の私に。
桜が散った頃に、
ふうを切ってあけて かいで。
いやいや、ポテトチップスのふくろみたいに、
ぷっくりまるくして送ることにしましょう。
そう、半年後の私に。
夏を目前に、
少し薄着になった頃に。
ぼうっとして時間をもてあますような午後に。
そうっと小包で届けます。
冷えたまま送るから、
少しだけ そっと あけて かいで。
きっと思い出すでしょう。
幸せなのに物悲しい ぴんとした朝の光を。
ひたすら透明な 透明な雨の午後を。
胸をしめつけるように 赤く溶ける夕焼け空を。
きっと必要とするでしょう。
長い夜の いつまでも続く言葉のダンスを。
冷えた空気なか ぴんと伸びる背筋を。
小包をあけた私は
きっときっと思い出すでしょう。
届いたら 少しだけ そっと あけて かいで。
かきあつめ かきあつめて つめこんで送りましょう。
とけないように、
きえないように、
できるだけ沢山送りましょう。
大好きな人たちにも送りましょう。
ぷっくりまるくして 真空パックの心意気で。
さあ今夜あつめよう。
大きなふくろをもって 急いで夜の住宅街へ。
あたり一面 秋の匂い。
深呼吸をして。
吸い込んでも吸い込んでもからだにしみてくる。
美しいものに向き合って 倒れそうになる。
ああ 金木犀の香り
どうか消えずに 届いて欲しい。
ねえ 金木犀の香り
どうか消えずに つかまって欲しい。
ああ 金木犀の香り
好きな人すべてに 届いて欲しい。
ああ 金木犀の香り
できれば いつまでも このままで。