[:Holiday
プテラノドン

 
「じかにふれてみればわかる」

 男は女の手を握り
 宮殿内を歩き回った
 久しぶりの休日だった
 彼女は大理石の花瓶の中で
 プリマのように くるくると
 まわってみせた
 もしくは、
 呪術師があやつる
 白銀のスプーンのようだった
 彼女の体からたえず噴出する
 いろとりどりの花びらは
 やがて蝶となり―回廊を飛び回り
 蝶を追いかける二人もまた
 春となった

あらかじめやいずれにせよ、もしかしたら
あわよくばとはいいつつも結局は、なんて―それ自身が
幻想だと証明すると同時に否定した、かつての旅人たち
歴史の一ページに漂う海賊くずれの詩人たちもまた、
前置詞が絶えず流れ落ちる真空の滝つぼへと身投げした二人のように、
永遠と刹那の合流地点である、浜辺で拾い上げられた
宛先不明のメッセージボトルか、蒼く暗い水底で、
赤々と燃え続ける珊瑚に抱かれたままの木箱の中に
孤独の嵐が過ぎ去った後で迎えた休日を閉じ込めたのだろうか
そして私達もまた、恋人達が拾い上げた貝殻のように
持ち物とはまるっきり別の記憶の持ち主となれるのだろう
たとえ私たちが、それに気づくのが
数千年後の休日だとしても―





自由詩 [:Holiday Copyright プテラノドン 2007-10-07 18:31:44
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