ひとつの秋の夜
雨宮 之人
まるで終わらないみたいな、空
彼岸に乱れる紅の花
音もなく太陽が黄道を傾いで
ふっと、突然に夜を連れて
気が付けば昨日よりも深く
夜が、深く、沈んでいく
音の響きは明らかに変わっている
リンと鳴る一瞬に満ちた悲しさを、僕は感じる
そんなひとつの夜には
触れられる温かさに幾度も救われて
心が必要なんだと、改めて僕は信じる
こんなひとつの夜には
醸成される思い出の、センチメンタルを置いて
あなたを、抱き締めて眠ろう
夜が、ただただ更けて、やがて
体温が切なく濡れる、霧の朝が来る
ひどく個人的な
でも、ひどく普遍的な
意味だけが、そんな夜にはあるだろう
そんな、何事もないような夜のひとつひとつに