銭の花
恋月 ぴの

無いものねだりをするよりはと
秋の白い雲流れる堤防で
ひとり
清貧ということばの意味に思いを馳せる

それはあまりにも懐かしいことば
仄かなランプの灯かりを頼りに
見果てぬ夢を追い続けられた時代のことば

無くとも困らない
そう言い切れるほど熱い何かを持ち合わせているのか

親兄弟を騙してでも
見知らぬひとを殺めてでも
己の魂を売り渡したとしても

銭の花
そんな花咲き乱れる
この街の片隅で誰かが泣いていた
誰かがほくそえんでいた

無くとも困らない
そう言い切れるほどの気概を持ち合わせているのか

秋の白い雲よりも
初雪の身を切る白さよりも
銭の花は白いという

その花のつぼみを
こころの奥底に秘めひとは生きているのかも知れない

一羽の老いた白鷺
重い川の流れを怨むでもなく
逆らうのでもなく
ただ水面を滑るように両翼を広げ
そして
夕闇の彼方へと消えた

無くとも困らない
そう言い切れるほど君は人生を捨て去ってしまったのか




自由詩 銭の花 Copyright 恋月 ぴの 2007-10-03 21:48:20
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