腹を決める**分前
影山影司

 まともに飯を食ったり水を飲んだりまっすぐ歩いたり仕事へ行けなくなったり眠ったり起きたりが出来なくなったり、する。以前姉さんとそういう話をした。身内は、無限に遠くて絶対に切れない縁を持っているからそういう話が出来る。

 具体的に対処できない問題というのは厄介だと言い合った。

 こういう、強迫観念を他人に伝えずに生きることは孤独なのだろうかと考える。強迫観念の一つや二つ、誰だって持っているんだけど(素足で床を踏めない、手を過剰に洗う、等)一つや二つじゃなくて三つも四つもだったらどうしたら良いんだ?


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 例えば先生が、アスペルガーの子供に(宿題を忘れたことを問いただす意味で)「犬があなたの宿題を食べたの?」と尋ねたら、その子はその表現が理解できなければ押し黙り、先生に自分は犬を飼っておらず、普通犬は紙を食べないことを説明する必要があるのかどうか考えようとする。つまり先生が、表情や声のトーンから暗に意味している事を理解できない。
 先生は、その子が傲慢で悪意に満ち、反抗的であると考え、フラストレーションを感じながら歩き去っていくかもしれない。その子はその場で何かがおかしいとフラストレーションを感じながら、そこへ黙って立ち尽くすことだろう。
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 wikipediaより引用。
 反論出来ねェー。



 プラネテスという漫画の中で、主人公ハチが妄想に駆られるシーンがある。広大な宇宙に普通服で漂う最中、宇宙服を着たドッペルゲンガーと相対するハチ。ドッペルゲンガーは言う。
「自分を鎧わずにこの大宇宙で生きていけると思うのか!?」
 そしてドッペルゲンガーは宇宙服の中でミイラとなり塵となり、虚空へと消え去る。

 このシーンが、頭の中でぐるぐる巡る。
 僕の母船は何処だろうか。位置情報を知らせてくれる母船は何処だ。銀河を不平等に照らす太陽は何処だ。命綱はあるか。酸素残量は。無重力圏から有重力圏へ、そして次第に加速して大気の壁に削り取られて焼け崩れる。

 仲間は何処へ消えた。
 メディック、オペレーター、メカニック、パイロット。
 何処へ消えた。

 鎧わずに生きろと言う人々よ。
 何処へ消えた。
 剥き出しの核が悶えている。笑ってるんじゃないんだ。
 楽しんでなんかない。必死なんだ。

 広大な宇宙で、寒大な宇宙で生きて行くには無敵の強さが必要なんだ。
 糞だ。チクショウ。


未詩・独白 腹を決める**分前 Copyright 影山影司 2007-09-30 03:22:47
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