うそ
恋月 ぴの
うそは泥棒のはじまり
だったはずなのに
ひとは誰でもうそをつく
愛するが故のうそだからと
あのひとは
目も合さずにつぶやいた
その場しのぎのうそを重ねて
針千本の〜ま〜す
指切りげんまんの夕焼け空に
無数の黒い影が飛び交っていたのは
いつの日だったのだろうか
幼いころの思い出は
母親についた。ほんの小さなうそ
やがて
どうしようもないほど大きくなったうその塊に
夜毎うなされ目を覚ましては天井の節穴を
じっとみつめ夜明けを待った
うそは泥棒のはじまり
それは
あながちうそでもないようで
待ったなしのその日が訪れるまで
ひとは誰でもうそをつく
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にちじょうの、あれこれ。