ポケットと速度

始終電車の中で揺れているような一日だった
駅のホームで一息をつく 
そんな感覚でベランダへ出て 
ジーンズの裾を捲り 風が吹くのを待つ

どこか遠くの方では 
花火が上がる音が聞こえている
建物の向こう側にある空を見る方法を
昔は知っていたような気がして
あのころ を作るのに夢中になっていく

定刻通りに帰宅した人々が
今日もまた 
この部屋の前を横切って行った
こつこつと足音をたて 一日が遠ざかっていく

握る先のない右手をぶらつかせ
仕舞ったものがこぼれていく その速さのことを思った


自由詩 ポケットと速度 Copyright  2007-09-29 03:02:26
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