ひとりとライチ
そらいろ☆コゾウ

左腕が重くて。

ずしりと重くて、寝ていても左腕だけが布団に沈みこんでいくみたい。

鈍い痛みがある。なんでだろ。

どくどくと脈打つ痛みがあるのはわかる。

きっと、腕が重いのもそのせいなんだ。



こんなの、切り落としてしまいたい。



そう、毎晩思いながらも

結局やらなかったのは



面倒だったのと、独りだったから。



死んでるように生きたくないって、

生きてるように生きてるってのは、どーゆーのなんですか?



例えば腕を切り落としても

死ぬ前に発見してくれる誰かがいません。

そんな生き方しちゃった私は、生きてるように生きれてますか?



たぶんですが、答えはノーでしょ。



だから、だから

相方が欲しかったのです。運命共同体でしょ。一蓮托生でしょ。

別にそんなの

恋人だとか旦那だとかじゃなくていいんです。



私が手に入れたのは子供でした。

言っても自分のじゃなくて、姉が置いてった姉の子です。

不肖の姉の割にはその子は可愛らしい顔立ちで、白い肌にくりっと丸い黒い目が見るものの寵愛を誘い

不肖の姉らしく、「響きが可愛い」という理由だけで「ライチ」と名づけられたその子は

「ひつじさんなの」

と、これまた可愛らしい声で、いかにもさわり心地のよさそうな羊のぬいぐるみを抱いて・・・いると思ったら「おもしろいなの」とニコニコしながら羊をひっぱったりなげつけたりする残虐性を見せつけ、私の心を奪い去ってゆきました。



別に教育してやろうとか思ったわけではないけど、食事のときに肘をつく癖や羊の毛をむしろうとするのは辞めさせました。

けど、「〜なの」と語尾につける喋り方は、そのままにしたんです。

なんだか、姉の影を、感じた気がしたから。




相変わらず、左腕はずしりと重く。



ライチと暮らし始めて、一番最初に教えたのは「119番」

5歳と言うには頭の悪そうな子供に、私は求めすぎでしょうか?



重いよな、この小さな子は、私の重さに耐えられるかな?

なんて思いつつ、タチの悪い私は、きっとこの子はそんな事にさえ気づかないだろうと、高をくくっているのです。



そんな、杞憂。




信号待ちをしているときに、ライチの頭に手を載せていたら

「おもいなのっ」

と凄い勢いで手を除けられました。不服そうに口をへの字に曲げちゃって。



生きてるよーに生きれてるのか、そんなの知ったことではありませんが

こんなのも、アリなのかも。知れません。




散文(批評随筆小説等) ひとりとライチ Copyright そらいろ☆コゾウ 2007-09-28 13:37:24
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