口笛
松本 卓也

隙間から漏れる風に誘われ
当て所なく泳ぐ午後十時
空を縫う電線を辿れども
待ち望む場所に帰れはしない

提灯屋台から漂う焼串の香り
車道の真ん中で踊る同輩
年の見合わぬ男女とすれ違う
当たり前の平日が過ぎていく

ホテルの小窓から遠くを覗き
飛びたい衝動を苦笑で抑える
何も諦めきれないままに
何を捨てて行けるというの

取り戻せないのは時間だけじゃなく
誰の為にも生きていないと嘯く寂しさ
誤魔化す術さえ失って立ち尽くし
煤けた存在が街に透き通っては


消えていく


口笛に一片の詩を乗せ
星を探しに出かけたら
大脳皮質にこびり付く
笑顔を探し出せるかな

もう僕を救わない表情を
どうして思い出すのだろう
何に辛くて泣いてるかなんて
ずっと忘れていたいのに


自由詩 口笛 Copyright 松本 卓也 2007-09-28 01:14:37
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