瓶詰めの約束
七生

約束は小瓶に詰められる
果たされた約束は蓋が開かれ
光が零れ落ち
私の周りを包み込む

約束は小瓶に詰められる
果たされない約束は
いつまでも閉じたまま
私の周りを浮遊する

生まれる事の無い胎児のように
孵化する事の無い卵のように
芽の出る事の無い種子のように
瓶は閉じたまま
私の周りを浮遊する

十一ヶ月経とうが
二十ヶ月経とうが
腹から赤子が生まれて来ると信じるように
干からび
軽くなっても
いつか殻にひびが入る事を信じるように
崩れ
小さな穴が侵食を始めても
いつか芽がでる事を信じるように

私は虚しく浮遊する瓶を眺める
いつかこの蓋が開かれますように
この赤子が生まれますように
この卵が孵りますように
この芽が出ますように

瓶は曇り膨張する
いつか私の周りで破裂する
赤子は流れ
卵は干からび
種子は崩れ

あなたの守らなかった約束の瓶は
破裂して私を救う
私を殺す

今、私の周りを沢山の瓶が浮遊している


自由詩 瓶詰めの約束 Copyright 七生 2007-09-27 20:10:28
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