わたしのイルカちゃん
池中茉莉花

うちにきたころの あなたは
  ちっちゃなころの わたし そのもの

世の中におもしろいものが満ちあふれているから
 どんなに高いハッチの上にでも
  とびのぼっては かけまわる

一秒たりとも おちついていられない
 あっち ちょろ こっち ちょろ

     だからあなたはわたしの妹

あのころのわたしは
 食べ方をわすれたカラス
あなたは
 「こうやるんだってば!」
   と みずから やってみせてくれた

あの日、未明
 切り立った崖の先端にたたずんでいたわたしをみて
     ミャーァオウ ミャーァオウ
ミャーァオウ の サイレンがなかったら
  わたしは 今 ここにいなかったかもしれない

     あなたはわたしに寄り添って
      大海を泳いでくれる
       イルカちゃん


今 あなたは あのときのわたしと同じように
 切り立った崖の先端にたたずんでいる
わたしに 苦しみながら生き抜くことを
 教えてくれている
     
     今度はわたしがあなたのイルカちゃん
       
凍てついた海の中だけど 
 寄り添って泳ぐから 
ぷるぷる凍えながら あたためあおう
 一秒でも永く  


自由詩 わたしのイルカちゃん Copyright 池中茉莉花 2007-09-26 06:30:13
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