わたしのイルカちゃん
池中茉莉花
うちにきたころの あなたは
ちっちゃなころの わたし そのもの
世の中におもしろいものが満ちあふれているから
どんなに高いハッチの上にでも
とびのぼっては かけまわる
一秒たりとも おちついていられない
あっち ちょろ こっち ちょろ
だからあなたはわたしの妹
あのころのわたしは
食べ方をわすれたカラス
あなたは
「こうやるんだってば!」
と みずから やってみせてくれた
あの日、未明
切り立った崖の先端にたたずんでいたわたしをみて
ミャーァオウ ミャーァオウ
ミャーァオウ の サイレンがなかったら
わたしは 今 ここにいなかったかもしれない
あなたはわたしに寄り添って
大海を泳いでくれる
イルカちゃん
今 あなたは あのときのわたしと同じように
切り立った崖の先端にたたずんでいる
わたしに 苦しみながら生き抜くことを
教えてくれている
今度はわたしがあなたのイルカちゃん
凍てついた海の中だけど
寄り添って泳ぐから
ぷるぷる凍えながら あたためあおう
一秒でも永く