雪別れ
結城 森士
雪のように
北の国から降り
都会の空を卑小だと罵ったり
(氷花は枯れ
また、狭苦しい檻の内側では
しおらしく澄んでいた
*
閉じられた鳥かごの街にて
虚脱に溺れて座り込み
薄汚れたビルやビルの間に閉じ込められ
・ビルやビルの奥底から
わずかな残空に向かって
遠い夢を見る
倒錯して影を空に落とし
まだ、狭苦しい箱の中で喘いだり
・喘いだり
(呟いたり)
と叫んだり
引き裂かれた金属音を叫び
(喘いだり)
喘いでいた
泣く日はなく
嗤う日
そして語る
(北の故郷に降る
雑念に捉われずに
自分の影を大空に映し出し
/認められることが
生きている証明だ/とか
/あーだこーだ/と
理由もなく
泣く日はなく
・嗤え
*
秋の日にも氷の雨
都会の暮れを偽りだと罵ったり
枯葉を踏みにじり
終日、雨傘、泥水
雨降る窓から、鬱屈した暗雲を眺めて
雪の降る所から来たから、と言って
いつまで経っても氷の花のままだった
唐突なある日
時々ある時で
突然女は鳥かごの中で
感情を失くしてしまった
傷がついてしまうからと言って
感情を失くしてしまったのだから
笑うこともできないのと言って
悲しい目をして僕を見た
*
雪のよう
北の国から来て
都会の空を猥雑に写したり
そうかと思えば
突然、残像だけをのこして
消えてしまった、呆気なく
氷花は枯れ
彼女は空と断絶した
雪模様は空に落とす