ATGC
haniwa

スライスしていた
ざっざっざっざと
タマネギは薄くなって水に落ちてゆく
やがてそれは
水を吸って透明になる
繊維が網の目のように残り
噛むと 少し甘い

僕の指がスライスされたとき
平らになった指先は赤い虫の巣のようだった
小さな赤い虫が何千匹も 何万匹も蠢いていて
こぼれ落ちたそれは 水の中に拡散した

僕の体も水に浸せば
スライスしたあと水に浸して
十分に晒した しかるのちに あなたに噛んでほしい
透明な僕は
きっと 甘くなってる


あなたの裸が
インターネットに晒されても
あなたの人生が
wwwwwwwwwwwと揶揄されても
僕たちはたぶん 気にしないだろう
あなたと 奥まった路地の飲み屋で
パソコンなんか一度もさわったことのない
楽しい人たちといっしょに ビールを飲むことができれば




みんな死ねばいいってたまに思う
けど スライスされる痛みがちょっと
気持ちいいなって思うこともまた事実で
僕の中で蠢いている赤い虫が
透明になって甘くなりますように
願う
あなたの痛みもスライスされて甘くなりますように
願う
そうしたら 僕が丸ごと食べてあげる
スライサーと 綺麗な水で
この世界を 少しずつ甘くして
いつか
ぜんぶ 食べられますように


自由詩 ATGC Copyright haniwa 2007-09-25 02:01:59
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