秋季登校女子物語
緋月 衣瑠香
疲れ果てた制服
ひとり、風を切って歩く
見慣れた通学路
憂鬱のひとつ
いつもの癖
何年も前に短く切り落とした髪
触りながら嫌気を紛らわせる
首筋を
秋の風が駆け抜ける
世界はモノクロ
秋の優雅で色鮮やかなものなんて
これっぽっちも見当たらない
唯一
白と黒以外に見えるもの
それは
学校の近所に住む
黒猫の目
あの子の目
銀杏のような、金
にゃあ
あの子が私を呼んでいる
そんな気がするから
好きじゃない学校へと
瞬く間に吸い込まれていく
またひとつ
チャイムの音が遠くで響いた