オフィス
まりも

そこは夜のオフィス
真っ暗で 誰もいなくて
机の上の書類の束には
見覚えのない文字が
所狭しと並んでいた

月も沈んで静寂が訪れた

肩に手を置かれて
振り返ると あなただった

見晴らしのいい
大きな窓の前で
肘掛椅子を勧められた

紙コップに入った
あたたかいココア

吸い込まれそうな闇を
二人で見つめていたら
あなたが立ち上がって窓の向こうに歩き出した

そっちに道はないよ

追いかけようとするあたしを制して
まっすぐ よろけることもなく
あなたは安定した足取りで
進んでいった

見えなくなってしまった

泣きつかれて気づいたらまた
眠ったようだった

暗いままのオフィス 
手付かずの書類の束

あたしの仕事は…



肩に手を置かれて
振り返るとまた あなただった

いつ帰ってきたの

泣いた目はきっと赤く腫れて
顔はむくんで化粧も剥げてるに違いない

あなたは相変わらず
黙ったまま首を横に振って
話すなと合図をする



ただいま

書類の束は跡形もなく消えて
空が光を取り戻していく

あたしの仕事は 待つことだと知った


自由詩 オフィス Copyright まりも 2007-09-23 23:47:06
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