夏追い
夕凪ここあ

さよなら

気泡みたいなことばを
無造作に夕暮れに飛ばしてみると
橙にすっと溶けていったのは
声が震えていたせいかもしれなかった

車輪の音、渇いた
ペダルを思い切り踏みしめて
陽炎の夏を追い越していく

それでも
紺色のスカートが
あまりにも上手に風になびいて
夏の終わり頃に
引っ掛かったことにも気づかないまま

いつだって
陽炎の揺らめきの奥には
君が笑って手を振っている

さよならを
いつまでたっても上手に言えないのは
あの夏の午後4時08分、
私、
立ち止まってしまったから。




自由詩 夏追い Copyright 夕凪ここあ 2007-09-23 01:47:57
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