必敗の歴史
狩心
殆どの人間が
近視か遠視だ
もしくは目がない
目が飛び出して
破裂しそうな奴もいる
無論、私もその一員である
私達と世界の間には
電子機器の画面や書物
カメラのファインダーがある
それを通して見るばかりで
肉眼は滅多に使われない
自分の精神状態と
何を通して見たかで
現実が規定される
個人と個人ですれ違う現実
そこに巣食った個人主義が
青い空を透明にして
町も人もモノクロームにする
ゲームのようにプログラム化された社会
文字と数字の配列が支配している
映像や音声も記号化されて
ボタン一つで再生される
人々の人生も
用意された選択肢の中で
ボタン式のアドヴェンチャーになるだろう
超現実主義と超非現実主義の対立は深まり
現代詩の未来は
超非現実の世界を超現実的に語る役目を担うだろう
データによって現実から剥離された者達が
データによって現実に引き戻される
そういう皮肉が待っている
個人の中に閉じこもった
絵本の中のメルヘンな人
社会工場のベルトコンベアーに
流されるままの機械人間
メルヘンと機械化が進む中で
戦闘員達は
その両面を持たなければならない
つまりあなたは
ファンタジックな機械
毒を持って毒を制すように
私達は頭をファンタジックにして
体を機械化する
そして必ず
自分を守る為ではなく
知らない個人を守る為に
大嫌いな社会を守る為に
自らの生命を捧げ
倒れていくだろう
私達はその姿に
詩情を感じる
詩人であるあなたは
もう既に戦っているか
詩人であるあなたは
自らを破壊しながら
強固な魂を持ち続けているか
人々の心に届くのは
あなたの死にそうな姿と
それでも目を強く見開いて
歩き続けるその姿だ