金細工の人形 
服部 剛

朝食をとるファーストフード 
一年前はレジカウンターの向こうで 
こまめに働いていた 
君の姿の幻を 
ぼんやりと夢見ている 

その可愛らしさは 
指についたシロップの味 
今ここにいない現実は 
苦いアイスコーヒーの味 

僕等の間には 
あの不思議な風が 
吹かなかった 

君のいなくなったレジカウンターで 
働く幾人かの店員をぼんやり眺めた後 
頬杖を外し 
テーブルに置いた 
「金細工の店」という本を 
開いてみる 

あの日
見上げた高嶺の空に咲く花が 
手に届かない幻ならば 

せめて
寂しがり屋の僕の周囲に集まる
かけがえのない人々の間に 
金を帯びた風が吹き 
いつのまにかできあがる 
金細工の人形を 
皆で囲んでみつめたい 





自由詩 金細工の人形  Copyright 服部 剛 2007-09-21 21:28:28
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