金細工の人形
服部 剛
朝食をとるファーストフード
一年前はレジカウンターの向こうで
こまめに働いていた
君の姿の幻を
ぼんやりと夢見ている
その可愛らしさは
指についたシロップの味
今ここにいない現実は
苦いアイスコーヒーの味
僕等の間には
あの不思議な風が
吹かなかった
君のいなくなったレジカウンターで
働く幾人かの店員をぼんやり眺めた後
頬杖を外し
テーブルに置いた
「金細工の店」という本を
開いてみる
あの日
見上げた高嶺の空に咲く花が
手に届かない幻ならば
せめて
寂しがり屋の僕の周囲に集まる
かけがえのない人々の間に
金を帯びた風が吹き
いつのまにかできあがる
金細工の人形を
皆で囲んでみつめたい