ぼくはね
いま、よくわからないんだ。
どこに いって
なにをたべよう とか
だれと あって
なにをはなそう とか
伝えたいことがあるんだ
なんて
それすら朧気で さ
ぼくはね
だから、ねむろうとおもう。
あさひが きれいだ とか
よぞらが つめたい とか
伝えたいひとがいるんだ
なんて
涙が出そうで さ
(忘れてしまった、失くしてしまった、零してしまった)
(何処に?)
(知るかよ)
(探しに行くんでしょう?)
(たぶんね)
あきらめる なんて ありえません
こればっかりは ゆずりません
はじめて みつけた もの なの です
ぼくはね
あぁ、なきそうだ。
白いページに灰色の罫線
黒いペン先 滲んだ色たち
言いたい
言ってほしい
言葉があるんだ よ
帰ってくるよ
迎えにいくよ
できるだけ早く
でも、あせらずに
愛しい、愛しい、愛しい、
いとしい、
青年は、猫の背中を撫ぜた。青年の短髪と、猫のぱさついた毛並みと、彼らがぼんやり見つめる夜空は、同系の色をしていた。
青年の左目は星を見ていた。右目には、やはり漆黒の眼帯があった。
月が隠れた夜だった。
星明かりと橙色の街灯に照らされた赤煉瓦の屋根の上、青年はじっと、泣こうとしていた。
明日の朝食はプレーンオムレツとクラッカーにしよう。クラッカーにはマーマレードをのせて。
そう考えると何故か自分が幸せな気がして(そういえば貰い物の紅茶もあった!)、青年はまた、泣かなかった。
だから
すこしだけ
さようなら。