わすれない
水町綜助

季節はずれの
つよいひかりに照らされた目抜き通りを
影を焼き付かせて
まばらに人が行き交っている
真っ直ぐ南北に延びた道には
終わりも始まりも無さそうで
くるりくるりと仕掛け時計の太陽が円を描いて
半円だけを見せている
僕もその通りを歩いていて
よく振り返ったり
辺りを見回したりして
拾いもののような
満ちたりなさや
よろこびにわらって
かしゃりと音もしないほどに
ひそやかに無くしては
空は晴れ渡っている

すこし歩くたびに
動く指先は五本で
骨のつながりの然るままに
少し曲がって指さしている

空気のかたち
南の果て
あるいは先

川のほとり
北の果て
あるいは先

どれだけの
どれだけの
どれだけの
幸も不幸も
あいまいも
緩やかな微笑みも
いつかどこか
この目抜き通りの上から
消えていってはしまう
ほんとうにちいさな
音だけを鳴らして

僕はまだ
決めていない
それを忘れないように
耳をそばだてるか
そんなものすべて
わすれてしまうか
まだ
決めていない






自由詩 わすれない Copyright 水町綜助 2007-09-20 12:53:59
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