ずっと何かに埋まっている
石田 圭太

幼い子の背をひらくと

痩せた背骨の喉奥を渉る
薄ぼんやりとした虹が、


そして

拾うように弾き上げると
それからは早かった。


飛んでいく静かな底の
透明な成長が、


叩き割ってまた掲げると
双子のまま走り去った。





昨日、
世界的な雨が降り
溝という溝からそれは溢れ出し
今や世界はひとつの大湖だ
そして波立つ私らは、
手を足を取り合って
拡がっていく光の輪
柔らかな泳法で泳ぐ
天国の背に生えた音楽は
新しい魚としての幸福だ
楽譜はない
だから今
音をもう、躊躇わなくていい


やがて幼い円になる
それはもっと正しい円だ


天使なら叫ぶように
天使なら叫ぶように
世界の胸に聴診器を
当てる、呟いている唄は
誰だろうねこの唄は
詩を





骨をもて余すのだった
詩を
骨と呼ぶようになって久しい


もっと、言葉を拾う
懐かしい顔が並ぶ
詩を
もっと、虹を
喉奥に拾う
並んだ顔が割れる
去っていく、舌先で
もっともらしい骨を選んでは
もっと奥に
いきたかった


拡がっていく光の輪だ
うちゅう、うちゅう
と騒ぎ立てるな
幼い子よ
君の描く空想は
この世界に溢れている



自由詩 ずっと何かに埋まっている Copyright 石田 圭太 2007-09-19 03:53:44
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