ずっと何かに埋まっている
石田 圭太
幼い子の背をひらくと
痩せた背骨の喉奥を渉る
薄ぼんやりとした虹が、
そして
拾うように弾き上げると
それからは早かった。
飛んでいく静かな底の
透明な成長が、
叩き割ってまた掲げると
双子のまま走り去った。
+
昨日、
世界的な雨が降り
溝という溝からそれは溢れ出し
今や世界はひとつの大湖だ
そして波立つ私らは、
手を足を取り合って
拡がっていく光の輪
柔らかな泳法で泳ぐ
天国の背に生えた音楽は
新しい魚としての幸福だ
楽譜はない
だから今
音をもう、躊躇わなくていい
やがて幼い円になる
それはもっと正しい円だ
天使なら叫ぶように
天使なら叫ぶように
世界の胸に聴診器を
当てる、呟いている唄は
誰だろうねこの唄は
詩を
+
骨をもて余すのだった
詩を
骨と呼ぶようになって久しい
もっと、言葉を拾う
懐かしい顔が並ぶ
詩を
もっと、虹を
喉奥に拾う
並んだ顔が割れる
去っていく、舌先で
もっともらしい骨を選んでは
もっと奥に
いきたかった
拡がっていく光の輪だ
うちゅう、うちゅう
と騒ぎ立てるな
幼い子よ
君の描く空想は
この世界に溢れている