自転車屋 
服部 剛

店内に置かれた 
壊れた自転車の傍らに 
しゃがんだ青年は 
工具を握る 

「 本屋さんはどこですか? 」 

歩道を通るわたしの声に 
こちらを見上げた青年の 
汚れた頬に 
大粒の汗がひとつ 
つたって落ちた 

翌日
歩道を通ると 
Tシャツの背中を 
汗で濡らした青年は 
身じろがず 
地面に埋まる岩となり 
自転車のタイヤを 
くるくる 回していた 

昨夜
自らの熱中事を記した
ノートを入れた
鞄を脇に抱え  
わたしは 
青年のしゃがむ 
自転車屋の前を 
通りすぎた 





自由詩 自転車屋  Copyright 服部 剛 2007-09-17 20:42:57
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