ゆうやけ
こうや

雨音はうるさく感じない。

胎内にいた頃の音に似ているのだろうか。

本を片手に聞き流すラジオのように

傍らでそっと邪魔をせずに正座している。




垂直に降る水の簾をかいくぐり、その向こうにある朱を思う。

まんまるい太陽が海に浸かって全身を沈める刻限のことを。

一縷の望みを託し朝に放った千羽鶴はその夕日に焼け焦げ、

水面と接触したと同時にジュっと小さな音をたてた。

その刹那に立ち昇るのは水蒸気。

小さな水に、小さな気体に、小さな呼吸源に群がる諸々の生き物。

生きているのか死んでいるのか判らないものが一番怖い。




夕焼け日焼けのメロディが流れて肌がひりひりし始めたら、

南に自転車を走らせようか。



自由詩 ゆうやけ Copyright こうや 2007-09-16 20:23:32
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