「サイダーの泡われわれは」
キキ

焦点をぶれさせるため朝はある 指のすきまに宿る色彩

眠り明け 耳鳴り低く響くので 夢のはしから余白を殺す



むしられる前のつぼみに似たひとの、首をしずかに傾けるさま

唐突に遠さを知った花の色、あれは残響 怖くないもの

しゃらしゃらと林檎をむいてゆくひとのまつげは綺羅とひかる音楽



教室の四隅に立って名を呼ぼう 憐れむ影に決別するため

サイダーの泡われわれは名ばかりの友愛はじけごっこもしみる

神様のあしおとを聴くたそがれに 十姉妹らは影を追い追い



子どもらは、しっぽの溶けたチョコレートを抱いて泣いて最後に眠る

外国語をはなす象とけんかして涙をながす、うたた寝さめて



わたしの名を叫べばいい。呼吸も震えもすべて蜘蛛の糸である

この橋が渡りきれずにシャツを脱ぎ、あなたへの旗にする八月







(※今までのものを、まとめなおして黄金夜で朗読したもの)


短歌 「サイダーの泡われわれは」 Copyright キキ 2007-09-16 10:29:58
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