まさに或る夢のやうな其れ等
空雪

眠り方さへ、忘れて
台詞を読んだピエロ

其れはまるで画集のやうな戯曲だと
照明係は踊つたのです

窓からの透き間風
静かなオペラを背景に
しゃらん、とカーテンを閉めた、彼の人でした


「欠けたクレヨンは戻ることなく手を染める。
 てふてふを御覧、其の真白の軌跡は読めませぬ。
 たとへば其れが夜道ならなほさら」
さう言つたのは少なくとも、天使などではありませぬ




其のやうな舞台の裏側で
人魚姫はくちずさむのでした


「真夜中に鐘が十と二つ
 呼んだら走つてお帰りよ
 迷つたときは おとなしく
 私へと、真白の紙飛行機を飛ばしませう」





さうして溜め息を吐き
人魚の座すべき海をどかした
無口な演出家





    ただ一言だけ呟いて、
    溜め息を深呼吸に変えて

    舞台を
    輝かせたのか、眠らせたのか



    ぼくは 知らない。




自由詩 まさに或る夢のやうな其れ等 Copyright 空雪 2007-09-16 01:22:49
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