真夏の満月
有邑空玖


「じゃあまたね」
って手を振って
どんどん遠ざかっていく君の笑顔
外燈がとぎれとぎれで
すぐに見えなくなってしまう


もう会えなくなるなあ。
一緒に歩いた海辺も
茅蜩ひぐらしを探したあの山も
忘れてしまうのかなあ。
知らない街で
知らない顔で
君は誰に微笑むんだろ?


ずっとその手を取りたいと思っていただけなんだよ。


言葉だけじゃ伝わらないなあ。
約束はいつだって破られるものと決まってるから
しないよ
今度会う時はさ、なんて
莫迦莫迦しいよ


君が居なくても生きていけるだろ
自信はないけど
たぶんきっと
君は誰かを選ぶかな?
寂しがり屋だったから
その手を取ってくれるひとを
見つけられるように祈ってるよ


(なんて嘘だよ)


時々は思い出してくれるかなあ。
とても好きだったことを
百年経っても忘れないから
思い出してくれると良いな
どんどん遠ざかっていく君の笑顔が
いつまでも記憶から消せないでいる
拙い僕を笑っても良い


見上げればほら、真夏の満月
たとえ遠く離れていても
君の居る街からも見えるだろ?



自由詩 真夏の満月 Copyright 有邑空玖 2007-09-15 00:32:36
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