恋月 ぴの

声にならなかった
あらん限りの力を込めたはずなのに

例えばそれは
孤島に取り残されたおとこがひとり
遥か水平線に見え隠れする
船影を
蜃気楼だとはなから諦めているかのように

もしくは
このままであって欲しいと言う
こころの奥底より覗く願望がそうさせているかのように

閉ざされた思い
閉ざさるを得なかった思いを
秋の風に乗せ
震える口蓋がこれ以上崩れ落ちぬよう
両の掌を頬に添える

何を声にしたかったのか
誰に伝えたかったのか
そんなものは
暗闇にでも押し込んでおけば済むはずのものを

それでも声にしようとして
精一杯に声帯を振るわせようとして


あれ




自由詩Copyright 恋月 ぴの 2007-09-14 21:21:47
notebook Home 戻る