さ
恋月 ぴの
声にならなかった
あらん限りの力を込めたはずなのに
例えばそれは
孤島に取り残されたおとこがひとり
遥か水平線に見え隠れする
船影を
蜃気楼だとはなから諦めているかのように
もしくは
このままであって欲しいと言う
こころの奥底より覗く願望がそうさせているかのように
閉ざされた思い
閉ざさるを得なかった思いを
秋の風に乗せ
震える口蓋がこれ以上崩れ落ちぬよう
両の掌を頬に添える
何を声にしたかったのか
誰に伝えたかったのか
そんなものは
暗闇にでも押し込んでおけば済むはずのものを
それでも声にしようとして
精一杯に声帯を振るわせようとして
あれ