バレーボールの夢
狩心

ジャンプして、アタックする
すべり込んで、ボールを拾う
宙に浮いたボールが一言、ギャグを言う
「布団が吹っ飛んだ」
選手も審判も観客もみんな一斉に
吉本興業の新喜劇のように転ぶ
その間、ボールは空中で静止したまま
みんなが立ち上がるのを待つ
礼儀正しく一礼をした後、
なぜか柔道選手や剣道の選手が乱入してきて
プロレスと武士道について語り始める
そして歴代のバレーボール選手達の人名で
しりとりを始める、
しりとりの攻防戦の最中、
バレーボールで規定された「25点で1セット」というルールの枠を越えて
両チームの得点が限りなく加算されていく
もう誰も、ジャンプもブロックもしなくなって
しまいには、肝心要のボールさえも、
コートの隅の、冷たい床の上に忘れ去られている
これがバレーボールの夢だと分かっているのは私だけ
観客は限りなく加算されていく得点に興奮しながら、
総立ちで、拍手をしている
冷たい床に落ちている、忘れ去られたボールを拾い、宙に投げる、
私はジャンプして、アタックする
高いネットを越えて、相手側のコートの床に
ボールがバシン!と叩きつけられた音が響くと
みんな静まり返って
私を軽蔑した眼差しで、睨みつける
私は急いでそのボールの下へ駆け寄り、両手で拾う、
バスケットボールのようにドリブルをはじめ、
高いネットに体ごと、ダンクシュートを決める
ネットに引っかかったまま、
蜘蛛のようにぶら下がる私を見て、
人々は歓声を上げた、


自由詩 バレーボールの夢 Copyright 狩心 2007-09-14 20:11:33
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