バス
優羽
ここにはバス停以外なにもない
曲がり角からバスがきたらすぐわかる
だがそちらはみない
何もないからみなくても
バスのエンジン音は聞こえてくる
私を乗せるためだけに
バスは私の前で急停車する
早く乗れよとせかすように
エンジン音は鳴り響く
ブザーと共にバスは走り出す
どこまでいくのか知らないが
そんなことには興味がない
私はいつものバス停で降りるから
見馴れた景色が変わっていく
ここにあったたんぼは
ここにあったスーパーは
ここにあった小学校は
みんな姿を変えてしまった
私の目には昔の姿しかみえない
思い出の中で生きていたい
でも移り行く景色は
私ひとりを残して
目的地がもうすぐ見える
私はブザーを押す
鳴り響いた音は
虚しくバスの中に響き
バスの中には私ひとり
私だけのためにバスは停まる
そして私を降ろすと
またせかせかと走っていった