収穫の秋
吉田ぐんじょう



コンバインが
おもちゃのように点々と
そこここに配置され

軽トラックが
ちゃかちゃかと走る

収穫の秋がきた

辺りには喜びが
薄い金色に色づいて漂っている



コンバインが刈るのは
ぴんと並んだ子供である
うまく刈らないと
子供はコンバインのなかで
ばらばらになってしまうので
農夫たちは慎重に
優しく優しく子供を刈り取る

くすぐったそうに歓声をあげる子供たちは
刈られるとすぐに軽トラックに移される

そうして洗われ
よく乾かされ
いいにおいになったところで
裸んぼうのまま
どこかへ連れていかれてしまう

わたしもあんな風にして
ここへ連れてこられたんだろうか

道端では
とりこぼされた子供たちが駆け回り
その後ろでは子供の残骸が
用水路に流されてゆくのが見える

用水路に捨てられた子供の残骸は
すうっと溶けて消えてしまう

秋の空気は
何故か焚火のにおいがする



やがて夜になると
すっかりきれいに刈られた田んぼに
静寂が訪れる

コンバインも軽トラックも
おうちの車庫にしまわれた

また春になったら
田んぼには水が張られ
子供の苗が植えられるのだ

用水路は真っ黒い水をたたえて
月光の下を流れてゆく

その水面からは時々ぱしゃっと
子供の腕が突き出されるそうだ




自由詩 収穫の秋 Copyright 吉田ぐんじょう 2007-09-14 11:41:51
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