冬、夜、消失
宮市菜央

冬、夜の霧雨
ダンボール屑が散らばる
指先でつまめばいともたやすく引き裂かれる

ダンボール屑の前には公園
入口で何度も何度もバイクのキーを回し続ける青年
横には彼女らしき女性が震えながら
ただじっとエンジンが回りだすのを待っている
二人には白い吐く息だけが今在る物で
肝心な傘がない

僕らは儚い
ふと そう言いかけて

ダンボールは家路を急ぐサラリーマンの足に踏み潰されて溶けていく
男女のバイクにエンジンの音が響くことはまだなく

もしかしたらこれらは明日の僕らの姿かも知れず


僕らは意外にも儚い
覚えておいても悪くはないだろう


自由詩 冬、夜、消失 Copyright 宮市菜央 2007-09-14 01:31:10
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