言葉を紡ぐという事
狩心
必要な世界を吐き出す為に
必要な世界を選び取る為に
咽喉仏に針を突き立てる
冷やかな笑いと冷やかな汗
そしてすぐに熱を持ち始める
冷静なんかじゃ居られない
ふざけた顔を真剣な顔にして
真剣な顔が焦げ付くほどに燃焼させる
燃える炎の顔
肉は全て焼け落ちて
白く硬い骨組みだけが残る
表情で誤魔化す事はできない
目の視線、言葉で誤魔化す事はできない
人それぞれ違う個性という名の骨格が
今まで歩んできた歴史に基いて
外気の下に晒されるのだ
必要な世界を導き出す為に
風穴は無数に開き
白く硬い骨格の中を
風が縦横無尽に駆け抜ける
骨と風のぶつかりで鳴る音が
少しずつ音楽になっていく
風が速度を増し
音のテンポも速くなる
音速が光速になった時
風が蚕の糸のようになり
白く硬い骨組みに肉が付き始める
生命の歓喜で赤く躍動した血管と
何かの使命を持った力強い筋肉と
それを保護する為の脂肪と皮膚と
新しく構成されて現れた顔は
燃焼される前の顔とは
まったく別のものである
そして新たな表情を見せる
泣いたり、笑ったり、怒ったり、
目の視線、言葉を紡ぎ始める
比較的迷いのない
しかし確実に迷いを秘めた
一人の人間という名の実存
何にも例えようがない
あなただけの歴史を
今、必要な世界を導き出す為に