「 かなしみ未満。 」
PULL.
もう思い残すこともないようなあるようなまだ「そこ。」にいるきみへ、
「はじめまして。」をくり返しようやくぼくらは他人になってゆく。
ドーナッツのように半分にかなしみ別けてしまえばいいのにね。
失恋写真はやく色褪せるように雨ざらし(ナイテナイモン。)
赤い風船のおんなのこもの欲しそうに唇舐めて「あげないよ。」
夜のカーテンはどんな罪だって隠してくれるとイツコ(処女)が言う。
一ダースのレモン列べてもまだ足りない甘酸っぱい性欲。
忘れたふりして指先でまたあなたの名前さがしてる(ナンテネ。)
星の王子の星のお家は流れて燃え尽きてしまいましたとさ。
スプーンの上で揺れる月をひとくちで飲んでそれでさよならをした。
了。