マウンテン僕
プテラノドン
授業の間、生徒がノートをとりつづけるだけの
つまらない教室の窓の向こうにS山があって
半世紀かけて、削りとったそこには
これまたつまらない工場と採掘現場の跡が残る
どんよりとした曇り空。ワイヤーに縛られた丸太の山
ヘルメットを被る現場監督が靴底で煙草をもみ消す
ラジオをつけっぱなしに、チェーンソーを操る男が
丸太を様々な形に刻む芸を見せる
悲鳴のようなうねりが響く森の中
摩擦熱による焦げた煙のにおい―その痕跡にいくらか驚かせられる
オーケー。それから男は、真似してみろといわんばかりに
一番ちゃちなチェーンソーを手渡す
おが屑まみれの丸太にどっかりと腰をおろし
じっとこっちを見ている
黒板に書かれた文字が小さすぎてよく見えないと彼は言った
これ以上小さく書きようもないけれど僕は適えようとする
慎重にな、と男が助言する
油断すると、チョークは折れてしまいそうだから
代用となる丸太も、近頃ばかにならないのだから
チャイム。緊張の糸がぷつんと切れる
休憩時間。監督はあらたな煙草に火をつけ
ラジオから聞こえる、秋の森のための
ささやかな音楽に耳を澄ましている
それから思い立ったように
電話帳をぺらぺらとめくりはじめる
何をさがしていたか大体見当がつくけれど
ここからじゃ文字が小さすぎて
よく見えないな