マウンテン僕
プテラノドン

授業の間、生徒がノートをとりつづけるだけの
つまらない教室の窓の向こうにS山があって
半世紀かけて、削りとったそこには
これまたつまらない工場と採掘現場の跡が残る

どんよりとした曇り空。ワイヤーに縛られた丸太の山
ヘルメットを被る現場監督が靴底で煙草をもみ消す
ラジオをつけっぱなしに、チェーンソーを操る男が
丸太を様々な形に刻む芸を見せる

悲鳴のようなうねりが響く森の中
摩擦熱による焦げた煙のにおい―その痕跡にいくらか驚かせられる
オーケー。それから男は、真似してみろといわんばかりに
一番ちゃちなチェーンソーを手渡す

おが屑まみれの丸太にどっかりと腰をおろし
じっとこっちを見ている
黒板に書かれた文字が小さすぎてよく見えないと彼は言った
これ以上小さく書きようもないけれど僕は適えようとする

慎重にな、と男が助言する
油断すると、チョークは折れてしまいそうだから
代用となる丸太も、近頃ばかにならないのだから
チャイム。緊張の糸がぷつんと切れる

休憩時間。監督はあらたな煙草に火をつけ
ラジオから聞こえる、秋の森のための
ささやかな音楽に耳を澄ましている
それから思い立ったように

電話帳をぺらぺらとめくりはじめる
何をさがしていたか大体見当がつくけれど
ここからじゃ文字が小さすぎて
よく見えないな


自由詩 マウンテン僕 Copyright プテラノドン 2007-09-10 23:50:32
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