月夜の扉
渡 ひろこ
おぼろ月夜の
淡い光に
照らされて
陽炎のように現れた
秘密の扉
ゆらゆらと
揺らぎながら
こっちへおいでと
誘っている
この扉の向こうに
何があるの?
ためらいがちに
ノブに手をかける
戸惑いながらも
一歩踏みだしてしまった
帰り道 迷わぬように
おそるおそる歩き出す
真っ暗な異空間
道先案内人はどこ?
のばした手が頼りなく
宙をつかむ
(あのとき
(出逢ってしまったのは
(メフィストだったのだろうか
闇の中の迷い子
瞳を見開きながら
ただ ただ
あなたを
探している
もういちど
あの煌々と輝く
満月の
月明かりを浴びれば
突然かけられてしまった
“恋”という
魔法は
解けるのだろうか・・・
(お伽話に
(すり替えても
(王子は
(早馬で駆けてこないから
手さぐりしながら
ゆっくりと
光の方向へ
光へ
まぶしい
陽光へと
歩みを返る