東京は寂しい街ねと あなたは笑う
その横で繰り返し相槌を打つ 機械が僕
(ここは陸橋の下の小さな公園で)
(ふたりだけで)
遠い日の忘れ物に あなたは愛おしそうに指をすべらす
今この瞬間の重大さすら 僕は測りかねている
(過去も今も未来も……ビル風に砕かれ)
(気づかないうちに……アスファルトの一部になる)
あなたが目を閉じると そこから居なくなるのでしょう
僕は変わらずここに居る あらゆる距離を一度に天秤にかけて
(誰も逃げおおせることは出来ない……都市から)
(そこに潜む圧倒的多数の悪意と善意から)
故郷の海のことを話している あなた
あなたのことだけ考えている 僕
(都市は海だ)
(そして人は難破船……誰からも望まれない)
かけがえのないあなたのことば
不安定で多義的な僕の心
(月に飛んだのはロケットとアームストロングだけじゃない)
(もっと……取り戻せないもの 引き返せない道)
東京は寂しい街ねと あなたは笑う
僕は……今 あなたの左手にふれる
(それでも都市は人を守る)
(都市の血とは けして鉄道網なんかじゃないのだから)
あなたに
僕はふれる