金属
佐藤伊織

鉄の匂いを
僕は知っている

あの金属のぬめりを
僕は知っている

太陽が反射する

鉄の匂いもそうやって
空中に反射されて
四方に鉄の柱を
延ばし続ける

一面にはえた鉄の柱の枝に
人影がみえる

遠い記憶だ
僕らの家族や友人が
影になってその枝に
佇んでいる

あたりは鉄の匂いで一杯になり
錆びたブランコが
無数に揺れている

錆びたブランコが揺れるたびに
空が落ちていき
家族の影も深く地面に垂れて
伸びていく

あの金属に覆われた暮らし
あの金属に囲まれた記憶

僕の頭はあのとき
確実に
金属化されていたのだった。



自由詩 金属 Copyright 佐藤伊織 2007-09-10 08:25:07
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奇妙詩集