知らない黎明
塔野夏子

鋭角的な警鐘が
残像する
私の眺めのどこかに いつも

おそらくあの時から
導音を失った私の音階
私はそれを
探しているのか
いないのか
果たして探すことを許されているのか?

この胸の憧憬のすべては
もしかしたらあの警鐘以前の情景への
回帰願望に過ぎないのか――

この手がいくたびも放った透明な遊離線が
いつか知らない黎明の虚空で
輻輳するのをただ待つしか
ないのか――

警鐘の残像は
時折ふいに増幅する
そこから無色の眩暈がわきおこり
私はよろめいてしまう

(主音 上主音 中音 下属音 属音 上中音……)




自由詩 知らない黎明 Copyright 塔野夏子 2007-09-09 11:38:36
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