つまずく
北野つづみ
歩くのに慣れて
つまずかなくなった
娘は
平地でもつまずいて転ぶ
ひざっこぞうに
青あざをつくって帰ってくる
そのたびに
下を見て歩かないから と叱る
歩き始めたばかりの頃は
もっとよく転んで泣いたものだ
慎重に歩くことを少しは覚えて
いまは無闇に駆け出すことはしない
無邪気
無鉄砲
好奇心
上手に歩くために捨てたもの
思い返せば多くのものを
私も後ろに捨ててきた
つまずかなくなった人生に
つまらない とため息をつけば
大丈夫
そのうち足が上がらなくなって
部屋の敷居にも
つまずくようになるわよ
年上の友は笑いながら言う
二〇〇七年七月十五日